気仙で暮らし、働く

当事者として復興・まちづくりに携わりたいと移住した気仙での日々のこと、暮らしのことをつづります。

市長の娘

スキニージーンズにノースリーブ、赤いハイヒールにストレートヘアー。打合せに出て来た相手は見るからに我が社の相手には珍しい女性だ。いったいこれは??

昨日のこと、あるプロジェクトの一環で日本で行う紛争後の被害者支援の研修の候補者が出そうだから話に来てほしいとの電話で市役所に赴く。向かう途中の車の中でコートジボワール人の同僚が、その候補者はどうやら大学のときの同級生かもしれない。彼なら信頼もおけるし、学生時代に紛争解決の勉強もしていたから適任だろう、とのこと。私も多少気持ちが安心し、面談を楽しみする。

そこで現れたのが何とも高貴(?)な女性だ。あまりにイメージと違う風貌に驚き(もしかして、私が彼(il)と彼女(elle)を聞き間違えていたのかも、と、同僚に目配せをする、と同僚も目を丸くしている。

何はともあれ面談を始めると、同席した市役所でのプロジェクト責任者が、市役所中を探したがやっぱり彼女が適任だという。彼女はプロジェクトの直接の関係者ではないが、これを機にぜひ一員として活躍してもらうつもりである。市役所としてもイチオシで、プロジェクト期間中には必ず役に立つとの文書も作成したい、とやけに必死で説明する。

しかし、その女性からは何の発言もない。研修の概要を説明しても「そう。私はコミュニケーションの仕事をしています」とのひとこと。とても200万人の市から意欲がある人として推薦されたとは思えない。日本に行って日本シンパになってもらえたとしても、その後のプロジェクトで活躍してもらえるとは到底思えないー。いやいや、そうやって日本の常識で考えてはいけない...いつも仕事を一緒にしているカウンターパートの推薦だし、今日は緊張しているのかもしれないし紛争被害者とのコミュニケーションは重要だから研修をきっかけとして活躍してもらえれば...考えがぐるぐる回る。

とりあいず一通りの情報収集を終えて、プロジェクトの専門性を持つこと、帰って来た後にきちんとこのプロジェクトに貢献すること、これが担保されることが参加の条件です、と残してその場は失礼する。

 

市役所を出て、車に乗った瞬間、同僚がまくしたてる「あれは市長の娘だ!」(つづく)